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横浜地方裁判所川崎支部 昭和42年(タ)18号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔要旨〕第一、離婚および慰藉料の請求について

一、<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができる。

(一) 原告(妻)と被告A(夫)とは、昭和三四年四月結婚式をあげて横浜市に家庭を持ち、同年五月婚姻届をして法律上も夫婦となり、その後約四年間円満な婚姻生活を営んできた。

(二) 被告Aは、昭和三八年五月頃、当時その勤務先○○木材会社の事務員をしていた被告B女と親しくなり、以後同人と情交を重ね、原告に秘してしばしば同人方に宿泊し、原告との家庭生活をかえりみなくなつた。かくして同三九年一一月頃同人を懐姙させ、出産が近づくと、被告の養父である被告Cと協議のうえ、同四〇年七月被告B女を秩父市にある被告C方に転居させ、同年八月二一日同市において訴外○○子を出産させた。その後も引き続き同四二年七月まで被告B女を被告C方に居住させ、その間しばしば同所に被告B女を訪れ、他方原告とは、同四一年五月以来別居して、翌四二年四月までは家賃および生活の費用として毎月約金六〇〇〇円を原告に給付したが、その後は何らの給付をしていない。

(三) 被告B女は、被告Aが原告と婚姻して円満な家庭生活を営んでいることを知りながら、昭和三八年五月頃から被告Aと親しくなつて情交を重ね、しばしばその居室に被告Aを、宿泊させるうち、同三九年一一月頃懐妊した。出産が近づくと、被告Aおよび同Cのすすめに従つて、同四〇年七月被告C方に転居し、同年八月二一日訴外○○子を出産し、その後同四二年七月まで引き続き被告C方に居住して、しばしば被告Aを来訪させた。

(四) 被告Cは、被告B女が被告Aの子を懐姙したことを知ると、昭和四〇年六月頃、原告に対して、被告B女が出産した後は、被告Aは被告B母子とともに生活し、原告は被告Aと別居して同人から毎月金二万円ずつの生活費をもらつて生活するこことしてはどうかと提案し、もつて被告Aと同B女との間の不倫の関係を容認し、原告と被告Aとの婚姻の解消を迫る態度を示した。被告B女の出産の日が近づくと、被告Aと協議のうえ被告B女を被告C方に転居させて訴外○○子を出産させ、その後も同四二年七月まで被告B女を被告C方に居住させた。同四〇年一一月原告が右C方に被告Aを訪ねた際には、原告に対し、「何しに来た。いいかげんにあきらめろ。」と言つて、原告と被告Aとの間の婚姻の継続を阻害する態度を示した。

(五) 以上の各被告の行為により、原告は、時として死を考え、また神経症に陥つて、手足がしびれ失神するなど、深刻な精神的苦痛を受けた。

二、右に認定した(二)の事実によれば、被告Aは、妻である原告に対して不貞行為を働き、それによつて原告との婚姻の継続を不可能にする結果を招いたものというべきであるから、両者間の婚姻には、被告Aの責に帰すべき離婚原因があるということができる。してみれば、被告Aに対して離婚を求める原告の請求はすでにこの点において正当である。

三、第一項において認定した(二)(三)(四)の各事実によれば、まず被告Aおよび同B女が意思を共同して原告に対する不貞行為をし、次いで被告Cが右被告両名の行為を容認し、その後は右被告三名が共同して、原告と被告Aとの間の婚姻の継続を阻害し、遂にこれを破綻させるにいたつたものということができる。

四、右被告三名の共同不法行為によつて原告の受けた精神的苦痛に対する慰藉料は、前記認定事実および諸般の事情を考慮して金一〇〇万円《編注・請求どおり》を相当と考える。<中略>

七、原告は、右慰藉料につき、昭和四〇年八月二一日から支払ずみまで年五分の割合による損害金の支払を求めるのであるが、被告A、同B女、同Cのさきに認定した共同不法行為は右期日後にも及んでおり、かつまた前記慰藉料額は、右期日後における右被告らの行為およびそれによる原告の精神的苦痛をも考慮に入れてこれを決定したものであるから、右慰藉料に対する損害金の起算日は、本件口頭弁論終結の日とすべきである。してみれば、原告の前記損害金の請求は、同日以後の部分についてのみ正当であり、その余は失当である。

第二、弁護士費用の請求について

一、当裁判所は、不法行為にもとづく損害賠償の請求について、不法行為者が誠実に賠償しようとするのを無視して被害者が訴訟手段に訴えた等の特段の事情がない限り、そのために要する相当額の弁護士費用をも右不法行為にもとづく損害として賠償の請求をすることができると考えるものである。

本件についてこれをみると、前記特段の事情の存在は認められないから、弁護士○○○○を訴訟代理人として被告A、同B女、同Cに対し、同被告らの共同不法行為にもとづく慰藉料の支払を求める原告の本訴請求については、これに必要な弁護士費用相当額を、原告は同被告らに対して請求しうるものというべきであり、その額は金一〇万円《編注・請求一二万円》が相当であると考える。

二、原告は、本訴において、慰藉料請求金額のほか財産分与請求金額をも含めて算出した弁護士費用額を被告らの不法行為にもとづく損害として請求しているが、財産分与の請求は不法行為にもとづく損害賠償の請求ではないから、これを弁護士費用の計算に含めるのは失当である。

三、してみれば、本訴における原告の弁護士費用の請求は、さきに第一項で認定した金一〇万円の限度において正当であり、その余は失当である。

第三、財産分与の申立について

一、被告A本人尋問の結果によれば、同人は現在訴外○○木材有限会社に勤務して手取額約六万円の月給を得ているが、他には財産分与の対象となるような格別の財産を有しないことが認められる。

二、原告本人尋問の結果によれば、原告は結婚と同時にそれまで勤務していた訴外○○○○○株式会社を退職し、以後被告Aが被告B女と情を通じて家庭をかえりみなくなるまで、もつぱら被告Aの月給収入によつて生計を維持してきたこと、被告Aの右行為がなければ、引き続き右の状態の継続を期待しうる事情にあつたことを認めることができる。

三、以上に認定した事実からすれば、本件離婚後なお三年間、原告をして、被告から毎月その月給手取額の約三分の一にあたる一カ月金二万円の扶助を受けさせるのが相当であると考える。

四、よつて被告Aは、原告に対する財産分与として、本判決確定の日から三年間、毎月末日限り、一カ月金二万円の割合による金員を支払うべきものと定め、被告Aに対してその支払を命ずることとする。(水田耕一)

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